仏間を巡る見えない足音と祖父の刀
どんな伝承か
私が小学一年生のとき、祖母が中気で危なくなり、一家そろって勿来の関の麓の大津港にある父の家へ行った。祖父は「この家はできてからずっとおもしろいことがある」と言い、祖母の寝る十五畳の仏間に皆を集めた。夜半、仏壇の中からトントンという音とサラサラという衣ずれの音が起こり、壁の中を伝って左回りに動き、襖も障子も開けずに廊下を回って仏間へ戻ると消えた。翌夜、祖父が日本刀で音めがけて斬りつけたが、音は何事もなく刀先をすり抜けて行ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。