息子を崖から救った母の生霊
どんな伝承か
福島県相馬市向町の正西寺は編者の生家の菩提寺であり、住職の八幡義孝は編者の先輩に当たる人である。その義孝の自動車が山道の急なカーブにさしかかったとき、生きているはずの母堂の姿が突然前方に見えた。運転手はあわてて急ブレーキを踏んで車を止める。奇異の念を感じて二人で車を降り、前の方へ歩いて行ってみると、そこの崖が崩れていた。そのまま走っていれば車もろとも崖下へ転落死するところだった。バックして回り道をし寺へ帰ると、当の母堂が義孝の身を心配して門口まで出て待っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。