厠に立っていた猫の顔の娼妓
どんな伝承か
伊達郡桑折町で郵便局長をしていた平山市兵衛は、当時同町屈指の人物であった。維新前後のこと、妓楼松嶋屋で宴をはった市兵衛が、夜半に酔って厠へ行き戸を開けると、なかに一人の女がいる。姿は娼妓に違いないが、顔は猫の顔であった。驚いて次の戸を開けると、そこにも猫面女身の怪物がいた。厠に入れず廊下を引き返すと敵娼が心配して見に来たのに出会い、思わずその着物に触れ、そのまま気を失って倒れた。のちに調べたところ、この楼では病んだ娼妓を厠のそばの薄暗い部屋に寝かせたまま看護もせず憤死させていた。盛んな法要を行うと怪異は現れなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。