墓から戻って家計を助けた亡き父と夫
どんな伝承か
五島の岐宿での話。借金の貸借関係が不明なままだったため、その未亡人が夫の墓へ行ってこのことをくどいたところ、亡夫は幽霊となって家に帰り、昼は納戸に隠れ、夜のあいだに出て会計簿の整理をしたという。借主に会って談判までしてくれたそうである。同じ岐宿のI氏は九歳で父に死別し、芝居を見る銭ももらえぬのを父の墓で嘆いたところ、墓から白雲のようなものが出て父の姿になり、家までついて帰って毎晩いっしょに寝てくれたが、その身体は冷たかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。