手にまつわりついた夫の影
どんな伝承か
福島県の相馬地方で山中草野といえば、昔は里の村とは比べものにならない未開の純山村であった。旧大館・飯曽の二村が合併して今の飯舘村になる。その山中草野の関沢へ民俗学の岩崎敏夫が採集に出かけたときに聞いた話である。山の畑へ豆がらを抜きに行った女房が、その日にかぎってもの淋しい顔で早々と家に戻ってきた。どうしたのかと問うと、亭主が影のように煙のように手にまつわりついて仕方がなく、寂しくてならないので帰って来た、亭主に何か変わったことがあったのではないかと語った。ちょうどその日、夫の戦死が公報で判明した。隣家でも同じ日に、湯殿と便所の間を人が通ったような気配があったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・昭和(怪談集成))
日本各地の幽霊・人魂・生霊の実話怪談を十章+幽霊外伝に分類して集成する。