名古屋駅前で見た海に入る子の幻
どんな伝承か
名古屋のある洋品店主が、仕入れからの帰りに名古屋駅前でバスを降りて歩いていた。昭和二十六年六月二十七日の午後四時ごろのこと、急に目の前が海のようになり、男か女か見分けのつかない子どもが一人、海の中へどんどん入っていく光景が見えた。はっとして立ち止まると、六月の日差しを浴びた街角に立っているだけだった。その日は子どもが海へ出かけていたので気がかりだったが、店に戻って仕事をしていると、まもなく自宅から電話があり、九歳のわが子が溺れ死んだと知らされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。