辺戸名村に流れ着いた島仲の裏切り
どんな伝承か
真夏のある日、沖縄北部の辺戸名村の沖で、台風に遭った伊江島の船が浅瀬に乗り上げた。村の若者たちが刳り舟で全員を救い出し、部落総出で手厚くもてなした。助けられた中に島仲という二十四、五の美男がおり、宿を割り当てられた豪農の家の娘ハンドーグワーと深い仲になった。島仲は独り身で伊江島一の富豪の家だと語って結婚を約束し、娘は花染めの手拭いを贈った。ところが娘が名護へ用足しに出た留守に、島仲はその手拭いを首に巻いて伊江島からの迎えの船でひそかに去っていた。友人のカマルーから聞かされた娘は、家に戻って裏切りを知り、悔し涙にくれた。
原典より
ハンドーグワーは、血相をかえて、家に帰ってみると、果せるかな島仲は、出帆してあとの祭りであった。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。