空から降った裸の娘と坊主の約束
どんな伝承か
慶応三年十一月、京都の造り酒屋に大瓢箪を背負った乞食坊主が来て酒を三升飲み干し、主人が代金を取らず瓢箪にも詰めてやると、この家にはまだ嫁がいないが近くよい嫁を世話しようと言って去った。数日後の夕方、蔵人たちが裏庭で桶を洗っていると、十六、七の裸の娘が空からふわりと落ちてきた。娘は江戸日本橋あたりの商家の娘で、風呂から上がったところまでしか覚えていなかった。酒屋は坊主の約束の嫁だとして親と掛け合い、翌年春に盛大に婚礼を挙げたという。江戸浅草へ京の男が裸で降った話も添えられている。
原典より
それから数日を経て、十一月二十六日の夕方のこと、右の酒屋では、庫男どもが裏庭の池で桶類を洗つて居ると、腰衣もしない赤裸の若い女が、空中からャンワリと墜ちて来た稀代の珍事に、主人以下全部の人がそこへ驅集つた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。