壺を掘り当てて祟った地蔵山の墳墓
どんな伝承か
文政十一年六月、東本願寺の再建で地ならしの土が要り、京都東山の阿弥陀ヶ峰に続く地蔵山の土を買い取ることになった。山を預かる妙法院宮の執事松井大隅守の承諾で契約が結ばれた。掘り場の近くには古くから山神を祀った跡があり、そこから四十間四方は掘らない約束だったが、境のあたりに良い土が出たので欲を出して深く掘り進み、八月の初めに大きな壺の腹へ鎌先が当たった。とたんに地中が鳴動して枠が抜け落ち、人足二人が圧死する。ほぼ同時に世話人や大隅守ら六人が高熱を発した。巫者に神下ろしをさせると明智左馬介と名乗る霊が現れ理不尽な振舞は許さぬと怒鳴った。使いが詫びて戻ったとき大隅守は落命し、前後八人が同じ病で倒れた。
原典より
文政十一年六月、京都の東山なる阿彌陀ヶ峰の地續きの地藏山の土を、東本願寺再建の地ならし用として買取ることになり、山の管理人である大佛妙法院宮の執事松井大隅守の承諾で、土を掘らせることになり、十ヶ年を一期にして金五十両で契…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。