天狗に手を貸した宇都宮の和尚
どんな伝承か
宇都宮在の古刹、盛高寺の住職祥貞のもとへ、足利のころ天狗が現れ、少しの間だけ手を貸してほしいと願い出た。引き抜いて持ち去るのでなければと和尚が応じると、そんな乱暴はしない、貸すと言ってくれるだけで足りるという。承知すると天狗は礼を述べて去った。その後、和尚の手はいつからか縮んで伸びなくなり、村人は手短かの祥貞と呼んだ。三十日ほどして天狗が戻り、手を返すと告げて火防の銅印を一つ礼に置いていくと、手は元どおりに伸びたと伝わる。外岡北海が当地を巡ったおり土地の者から聞いた話として『三養雑記』に載る。
原典より
宇都宮在に盛高寺と云ふ古刹がある。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。