死んでも律義だった母の魂
どんな伝承か
語り手は当時、杉並区堀之内のお祖師様の近くに住んでいた。母は昭和十三年一月二十四日、八十三歳で世を去った。風邪をこじらせて喘息になり、床についてわずか四日のことだった。亡くなる三日前に見舞うと、お父さんがずっと枕もとに座っている、もうじき連れられて行くと、少しも暗い顔をせず淡々と語ったという。臨終の夜十一時十五分、眠っていた母が突然「愛子」と妹の名を二度呼んだ。同じころ千住で一人暮らしの叔母は寝つかれず仏壇に向かって経を唱えていたが、窓の外で黄色くぼんやり光るものが上下し、窓を開けた途端に消えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。