黄色いパラソルの女とロータリー
どんな伝承か
ある雨の晩、杉並まで客を乗せて帰りがけ、暗いルームライトの下で走行表にメモしていると、気配を感じて顔を上げた。目の前に髪をふり乱した女がガラス窓に顔を押しつけ、何か言っている。仰天して走り出し、五分ほど行くと先ほどと同じ感じのロータリーにさしかかった。曲がりかけの途中に人が立って合図しており、車をとめようとした瞬間、その女が黄色いパラソルと白いレインコートの、先ほどと全く同じ顔だと気づいた。女は車に向かってニヤリと笑った。二、三キロは離れていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。