ガラス戸に映る南京の死者たち
どんな伝承か
杉並区の青梅街道沿いでクリーニング屋を営んでいた男が出征し、上官の命令で南京の虐殺に手を染めた。負傷して日本へ送り返されたが、帰国してから、夜に手洗いへ立つたびにガラス戸へ次々と殺された中国人の亡霊が映り、男は手洗いの中で立ちすくんでいたという。妻もその亡霊を目にしたと語っている。男はついに心を病み、松沢病院で亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。