白昼の路上で消えた二人連れ
どんな伝承か
語り手がまだ若かった昭和七年ごろの盛夏、看板屋の土屋塗装店で働いていたときの話である。十六歳ほどの弟子と二人、午後一時ごろに元芝交番の筋向かいの氷水屋で、かき氷を食べていた。目の前の大通りを、カンカン帽をかぶった長身の男と、二十四、五の女がうつむき加減に並んで通り過ぎた。二人の姿が見えなくなって一、二分のち、自転車で坂まで来ると、その男女が後ろを向き、道をふさぐように立っている。どいてくれと怒鳴っても動かないので、自転車を降りて近寄った途端、照りつける真昼の日の下で二人はぱっと消えた。付近を探しても何も見つからなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。