欲心から狂気に仕立てられた甚蔵
どんな伝承か
享保十七年、木村村の甚右衛門の子・甚蔵をめぐる一件である。甚蔵は素行が悪く、尼になりたいという本望も叶わないので三春に引き取ると言い出された。自分のことを狂気のように言い、縄でくくってでも連れて行くというので、狂気に仕立てられて牢に入れられてはかなわないと思って連れ帰ったが、仕事もせず鍋釜に当たって打ち壊す、実家で保護してほしいという願いであった。願書には「乱気の様」「乱気同然、不埒どもこれ有り」とある。村へは保護するようにと命令が下されたが、調べてみると親類たちの欲心から出たことと判明した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。