狐が憑いたとされた老女の入水
どんな伝承か
宝暦元年、御代田村の太次平の妻が入水して死んだ。六十三歳であった。自殺と見られたが、身を投げるだけの理由がまったく思い当たらない。そこで、狐などが憑いて乱気したのであろうと判断された。『御用留帳』はこの一件を「乱気」「狐付」の語で記している。守山領では、理由の了解できない死や失踪が起きたとき、狐が憑いたと考えて処理される例がしばしばあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。