アカとりを貸せと迫る満艦飾の幽霊船
どんな伝承か
木更津の、いま映画館の東映があるあたり一帯はかつて下谷の河岸と呼ばれ、船乗りや船頭が大勢いた。材木商の地引国太郎は石徳丸という船を何杯も持ち、その船頭のせい五郎が船幽霊の話を伝えている。新宿や吾妻の漁師の間では、盆の十五、十六日は浜へ出るな、ボーコンに会うと言われていた。ところが新宿の気の強い漁師が構わず手繰を引いていると、風がやんで凪になり、沖から満艦飾の大きな船が近づいてきて、アカとりを貸せと声がする。震え上がった漁師がアカとりを遠くへ放り投げ、逃げようとしても船が動かない。幽霊はそれを拾って水を浴びせてきた。命からがら戻ったが熱を出し、十日ほど寝込んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。