厄神参りの帰りにひかれた男と最終バス
どんな伝承か
淡路では厄年に厄神へ参り祝宴を張る風習がある。三年前、六十一歳になった林さんは島外の厄神に参拝し、親類宅で一泊して翌日淡路に戻り、日暮れ頃に帰途についた。だが家に戻らず、富島川の橋のたもとで死んでいると知らせが入る。轢き逃げと分かったが犯人は不明だった。半年ほどして、ここを通る最終便のバスの一番後ろの座席に、うつむいた男が誰もいないはずの席に乗るようになり、運転手も恐れ、乗客は後ろに座らなくなった。バス停を二つ三つ過ぎると男は消えるという。厄神参りの帰りは人と話したりよそへ立ち寄ってはならないと昔から言われる。
原典より
郡山のタクシーの運転手をしていた湖南の人の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。