東中野駅近くの踏切
どんな伝承か
昭和十九年ごろ、東京帝国大学に通っていた人が、東中野駅から西へ五百メートルほどの無人踏切を通りかかった。夕方五時ごろで薄もやが立ちこめ、少し離れたベンチに着物の女が座っていて、こちらを向いて手招きした。何ですかと女のそばへ歩いていくと、突然後ろから肩をひどく殴られた。はっと振り返ると中央線の電車が止まっており、殴ったのは運転士だった。前を見ると女ももやも消え、自分は線路の真ん中に立っていた。自殺未遂として中野署で調べられたが、女の身なりは数日前に飛び込み自殺した女にそっくりだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。