死神が引き込むという中野の踏切
どんな伝承か
昭和二十三年から三十二年ごろまでのこと。語り手の実家は中野にあり、そのすぐ近くに魔の踏切と呼ばれる踏切があった。中央線の東中野寄りにある無人の踏切で、妹が生まれた夜も産婆を呼びにここを通ったほど、近所の人がよく使っていた。あるとき、南側の道から走ってきた三、四歳の幼児がそのまま踏切へ飛び出して即死した。急停車した運転士が線路脇へそっと横たえた子を、小学校低学年だった語り手は見ている。やがてエプロン姿の女が駆け寄り、いつまでも抱いて泣いていた。以来ここを通ると死神に線路へ引き込まれると言われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。