岩淵の線路で撮られた渦巻く影
どんな伝承か
岩淵駅の近く、東海道線の山裾を通るあたりで、運転手がそこを通るとどうもぞくぞくして頭がおかしくなり、事故を起こすらしいという。幾度事故があったか知れない。ある哲学博士が、そこに出るものをフィルムに収めてしまったらしい。出るのは大抵五月下旬から六月中旬と、秋の九月から十月ごろで、暗い晩、雨の降る晩だという。それを当て込んでちょいちょい出かけたが一度も出くわさず、最後の十九回目とかに自分自身が変になった。これは出たなと思ってやっとのことでフィルムに収めると、渦を巻いたような変なものが写っていたという。約三年ほど前のことだといい、そういうものはあるといえばあるし、ないといえばない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。