富士川のほとりの常世の虫祭り
どんな伝承か
皇極天皇三年(六四四)、富士川のほとりの大生部の村々を、「この虫を祭れば富や寿命が来る」と唱えながら虫を売り歩く老人が現れた。橘の葉の陰にいたのは蚕に似た緑色の芋虫で、村人が伺いを立てると巫女が神のお告げだと叫んで倒れ、村は大騒ぎで祭壇を作って祭った。噂は都まで広まり家産を傾ける者も出たが、駿河の国司秦河勝は、この流言の元が自分の領地の大生部の多という男だと知って捕らえ、民衆の面前で答打ちに処したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。