縁の下に住まいを構えた奥女中
どんな伝承か
寛政七年の冬、小笠原家の奥女中で器量が一、二と評された女がふいに姿を消した。屋敷は壁で厳重に囲まれて抜け出せるはずもなく、実家にも何の便りもない。二十日ほどたったある日、別の女中が手水を使っていると、細い流れに白い手が伸びてきて貝殻で水を汲んだ。悲鳴に人が駆けつけると、怪しい女が縁の下へもぐり込んでいく。捕らえてみれば消えた当の女中だった。よい所へ嫁いで夫もいると言い、案内させると縁の下の奥に筵を敷き古い椀を並べた住まいがあった。暇を出されたのち、手当ての甲斐なく死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。