急行を知らずに汽車を追った奉公娘
どんな伝承か
器量が悪いからと、私は西川新吉という家へ連れて行かれた。後で分かったが、その人は桂庵(口入れ屋)だった。豊野の西川の家の人はみんな良い人で、行儀作法から裁縫まで教わった。私は秋山で育ったので里のことが分からず困った。あるとき「旦那様をお迎えに行ってきてくれ」と言われ、停車場へ行って待っていると汽車が来た。旦那様が降りてくるかと思ったら、汽車は止まらずに行ってしまった。これは大変だと思って後を追ったが追いつけなかった。それは急行というもので豊野には止まらなかったのだが、私はそんなことを知らなかった。家へ帰って話すと、みんなに笑われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。