橋のたもとで送り状を問う大男
どんな伝承か
四十七年七月十九日のことである。木村純一さんは自宅の生け垣を剪定中に突然目まいにおそわれて倒れ、地元の診療所では手に負えず、仙台の病院へ転送された。そのベッドで体験した旅である。体はどんどん宙に浮き、雲の間から紫や赤や白の羽衣を着た二十代ほどの美しい女たちがほほ笑んでいるのが見えた。いい所に案内すると手を取られて行くと、大きな川に出た。向こう岸にはキキョウやユリが咲き乱れ、橋のたもとには、ひげ面でだぶだぶの服を着た大男が立ち、私あての送り状を持って来たか、なければ渡せない、とどなった。大男はえんま大王だったという。書き方を教えられて戻る途中、家族や親類が名を呼ぶ声をたどり、この世に戻った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。