三宅島の大猫に憑かれた叔父
どんな伝承か
昭和二十二年ごろの三宅島での話。島には神山と呼ばれる山がいくつかあり、山奥へ入ると子牛ほどもある猫がいて人を化かすと言われていた。ある日、叔父が山から戻ると目つきが据わり、おかしなことを口走るようになった。子供を連れて山へ行くと、そこに大きな猫がいると言うので子供たちも怖がった。やがて妻と長女に別れを告げ、医者も脈を取って気の毒だと言うほどになった。湯灌の湯を沸かしに戻っていると、叔父の家の子が飯をもらいに来る。誰が食べるのかと聞けば父だという。行ってみると叔父は布団の上に座り、三途の川まで行ったら閻魔にひよこが多いから帰れと言われたと、けろりとしていた。
原典より
私の叔母が先日(昭和五十七年・註/松谷)亡くなりまして、入院の初め頃は、死んだ者の顔が並んで崖の下に居て「来るな、来るな」と言っていて、自分は崖の上で必死につかまっていたと、夢の中の話をしていました。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。