橋のたもとで送り状を問う大男
どんな伝承か
四十七年七月十九日のことである。木村純一さんは自宅の生け垣を剪定中に突然目まいにおそわれて倒れ、地元の診療所では手に負えず、仙台の病院へ転送された。そのベッドで体験した旅である。体はどんどん宙に浮き、雲の間から紫や赤や白の羽衣を着た二十代ほどの美しい女たちがほほ笑んでいるのが見えた。いい所に案内すると手を取られて行くと、大きな川に出た。向こう岸にはキキョウやユリが咲き乱れ、橋のたもとには、ひげ面でだぶだぶの服を着た大男が立ち、私あての送り状を持って来たか、なければ渡せない、とどなった。大男はえんま大王だったという。書き方を教えられて戻る途中、家族や親類が名を呼ぶ声をたどり、この世に戻った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。