演習の宿で娘を採点した兵隊
どんな伝承か
大正十年九月、饗庭野に近い勝野で野外演習があり、行軍の途中で民家に泊まった。美人とはいえないが愛嬌のある娘が挨拶に来て、食事の給仕をしてくれた。食後、兵隊たちは射撃のときの旗の合図になぞらえて、娘の点数をひそかに言い合っていた。そこへ家の主人が現れ、うちの娘は零点ですわと言った。在郷軍人だった主人には、兵隊の符丁も見抜かれることがあるという笑い話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。