青柳の寺で行司の胸を押した娘
どんな伝承か
行司の木村庄之助が朝之助といった頃の話である。甲州青柳の奥にある土地の某寺の本堂に泊まると、真夜中頃、夢現ともなく十八、九の女に胸を圧しつけられた。その苦しさに思わずキャッと叫んで撥ねのけ、跳ね起きて燭を点し、仲間の木村(年寄常盤山)にこのことを語り、人々は気味悪く一夜を明かした。翌早朝、寺へ葬式の通知が来た。朝之助がさてはとうなずいて、住職に死人は十八、九のこれこれの女ではないかと聞くと、果たして十九になる町の菓子屋の娘で、朝之助の言う通りの容貌の女であった。
原典より
真夜中頃、夢現ともなく十八九の女に、胸を壓しつけられる苦さに—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。