薬師堂の脇立に残る不動盗難の縁起
どんな伝承か
著者が大町桂月翁とともに土佐戸波を訪れ、薬師堂を実見した折のこと。祠に伝わる榧の脇立には、正徳の頃、山内監物という者がこの不動の脇立を盗み出したところ、村に不思議な出来事が起こったため迎え返し、薬師とともに修復し祀ったという由緒が記されていた。折しも近頃また像が何者かに盗まれてしまったといい、村人は像が戻るようにと桂月翁に和歌を所望し、翁は「いにしえもかかるためしはあると聞く ふたたび返せ沖つ白波」の一首を村人に書き贈った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。