斬っても血の出ぬ女客の正体
どんな伝承か
碁友の医者坊主から、伴天連が子供を犬に変えたり車で空を飛んだりするという噂を聞いた太郎左衛門は、泊めている女客の正体を悟った。風のある夜、腰に刀を差して女客の部屋へ忍び入り、若い女の顔を斬りつけたが少しも血が出ず、女は静かに目を開けて太郎左衛門を見た。続けて乳母の首を斬っても同じく血は流れなかった。乳母は寝返りして、「その女はお前の奥方の魂だ」と告げると、三十前後の小柄な男の姿に変わり、それは取り逃がした入留満であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。