娘に憑いた神が伝えた秘事
どんな伝承か
父の真鉄が没して二年、文政十二年に、江戸の深川藪の内に住んでいた井上正鉄は四十歳で初めて妻を迎えた。名を糸子といい、のちに男也と呼び改めたほど頼りにしたという。結婚から二年後の天保二年の陰暦十一月、四十二歳のときに彼を深く感激させる出来事が起こった。親しく交わっていた侍医今井文徳の家で、出入りの老隠士源貞昌が日本の古伝を説いていると、聞いていた十八歳の息女イヨの手が震え、姿がにわかに変わって神懸かりの状態に入った。神事に通じた隠士がその場で審神者となり、灯明と神水を供えて静かに待つ。正鉄はイヨの口から告げられる指示に従って一週間の鎮魂を修め、その間に神道の秘事を聴き、また霊視したという。
原典より
父真鉄翁の死後二年を経た文政十二年(一八二九)、江戸深川藪の内に住んでいた正鉄は四十歳にして初めて結婚した。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・昭和) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・昭和)