砕いた骨を小川にまいた浅津の葬送とネンブー
どんな伝承か
鳥取県湯梨浜町の浅津は東郷池の西岸にあり、もとの大地主四戸を除いて近年まで墓がなかった。香宝寺の上杉正之住職から平成二十年に聞いた話では、昭和四十年代まで浅津の上と下に一か所ずつ野天の火葬場があり、脚の付いた石の台に棺を載せ、藁や薪で一晩かけて焼いた。翌日、のどぼとけなどわずかな骨だけを竹筒に入れて遺族が持ち帰り、残りは金梃で砕いて前の小川にまいた。骨をついばみにメダカが集まるので、この辺りではメダカを念仏の意でネンブーと呼ぶという。小川は東郷池に注ぎ、著者は水葬の名残とみている。
原典より
両墓制と散骨殯とは何か文献に見える古代の殯第12章 陰陽師・安倍晴明の墓なぜ晴明の墓とされたか長野県・木曾山中の晴明の墓安倍晴明の実像は、ほとんどわからない末裔の墓は実在する—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。