放免に命じられ鴨川へ捨てられた少年の亡骸
どんな伝承か
十二世紀初めに成ったとみられる『今昔物語集』巻十六には、平安京に暮らす貧しい生侍の話が載っている。ある夜、生侍は道で出会った検非違使庁の放免に捕らえられ、七条の裏手の空き地で死んでいた十歳ほどの少年の亡骸を、川原へ運んで捨てよと命じられたという。放免とは、もと罪人で、のちに犯人の追捕や護送に使われた者のことで、ここでいう川原は鴨川の河原を指す。著者は、話そのものは作り物でも、平安後期になお鴨川へ遺体を捨てる習いがあった事実を踏まえたものだろうとみている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。