宇屋谷でいまもささやかれる狐持ちの家筋
どんな伝承か
平成二十三年五月、著者は島根県出雲市斐川町神庭の荒神谷遺跡を見たあと、すぐ東の宇屋谷に立ち寄り、田のわきで草を刈っていた昭和十八年生まれの男性と話すうち、話題が狐憑きに及んだ。男性は、このあたりではいまも狐持ちと言い、年配の者はどの家がそうかおおよそ知っていて、結婚での差別もなくなっていないと語った。引き合わされた宇屋谷生まれの年上の女性は、指でキツネの頭の形を作りながら、隣の集落の同じ読みの家のうち一方は狐憑きだと言い、近くの家々の筋の良し悪しを挙げた。白蛇筋と呼ばれる家もあり、どちらも縁組みで大きな問題になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。