富士新田の猟師が語るカモシカ密猟
どんな伝承か
昭和三十年代ごろ、カモシカは山中に入ってもまず見かけることのない「幻の動物」だといわれていた。カモシカは昭和九年に天然記念物、昭和三十年には特別天然記念物に指定されたが、近年は生息数が増加し、平成二十四年八月には岐阜県飛騨市神岡町の市街地の駐車場でも目撃されるほどになったという。かつて数が減っていたのは密猟のためで、群馬県谷川岳南麓を猟場にしていた石倉篤太郎さんによれば、カモシカは肉が高く売れ、人に知れずに処分できたためクマ猟より金銭的に有利だったという。売り先は現みなかみ町藤原の宝川温泉と、新潟県南魚沼市六日町の業者で、業者は「捨て値」を意味する「ステバ」と呼ばれていたと語られている。
原典より
シカだらけの国道罠にかかったイノシシ人なつこいことも、あるらしいあのとき山中には何がいたか第9章 氷室と風穴を訪ねて「氷の朔日」土佐国・手箱山の「雪屋」周辺より著しく寒い土地がある—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。