女川源流のテン場に来た見えぬ獣
どんな伝承か
新潟県関川村高田で荒川に北から合流する女川は、中流から険しい谷が続く。著者は昭和五十七年ごろから、山形県小国町の舟渡から蕨峠を越える山道で女川の源流部へ下り、イワナ釣りに通った。川沿いの平坦地に簡易テントを張って二泊するのが常で、そこはかつて村人がゼンマイ小屋を建てた場所だった。通い始めて十年ほどたったある晩、帰りの荷を軽くしようと、フランスパンやソーセージ、チョコレートの残りをテントの周りにまいて寝た。翌朝には一切れも残さずなくなっており、以後毎回同じだったが、物音に気づいたことは一度もない。何が来ていたのか今もわからず、狐や狸、イタチ、テンなどだろうと著者は考えている。
原典より
第9章 氷室と風穴を訪ねて「氷の朔日」土佐国・手箱山の「雪屋」周辺より著しく寒い土地がある天然クーラーの方は庶民が利用した世界遺産になった荒船風穴第10章 戦後も産屋に籠もる女性がいた—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。