面倉川に臨む乞食岩の岩陰
どんな伝承か
耶麻郡西会津町下谷字面倉の乞食岩は、面倉川に臨んだ庇型の岩陰である。岩は川に沿って長さ二十メートル、高さ十メートルほどに切れ込み、奥行きは二、三メートルほどで、十人かそれ以上が雨や雪をしのげそうだが、前から吹き込む雨雪までは防げない。ここは間違いなく非定住民たちの集住地で、始まりははっきりしないが、昭和十年前後までは利用されていたという。かつては阿賀川沿いと只見川沿いを結ぶ往還が対岸を通り、それなりの往来があった。岩には落書がたくさん彫られていると辞典は記す。近くに住む女性は、婚家の親から乞食岩の話を聞いたが、人がいるのを見たことはないと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。