赤い椀が流れてきた小国のマヨイガ
どんな伝承か
遠野郷小国村の三浦某は村一番の金持ちだが、二、三代前は貧しかった。そのころ少し鈍い妻が家の前の小川沿いに蕗を採りに行き、谷の奥へ入り込むと、立派な黒い門の家があった。庭には紅白の花が咲き、鶏が遊び、牛や馬が多く飼われているのに人の気配がない。座敷には朱と黒の膳椀が並び、火鉢の鉄瓶では湯がたぎっていた。山男の家かと怖くなって逃げ帰ったが、誰も信じなかった。のちに川で洗い物をしていると赤い椀が流れてきたので、穀物をはかる器にしたところ、いくら出しても穀物が尽きず、家は富んだ。遠野ではこの家をマヨイガといい、欲のない妻のもとへは椀のほうから流れてきたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。