墓地で渡された尽きぬ金の袋
どんな伝承か
ある夜、墓地の中を通っていると、向こうから不思議な女が歩いて来る。よく見ると、同じ町でつい先頃死んだ者であった。驚いて立ち留まっているところへ、女はつかつかと近づいて来て、これを持ってゆけと言って汚い小袋を一つ手渡した。それは小重いものであった。恐ろしいので逃げ帰り、家に着いて袋を開けてみると、中には銀貨と銅貨をとりまぜて多量の金が入っていた。その金はいくら使ってもなくならず、今までの貧乏人が急に裕福になったという。著者は、これがいわゆる幽霊金の話であり、貧乏人の裕福になりたいという切ないまでの願望がこめられていると読む。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が著した日本文学の幽霊論である。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『今昔物語集』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じたのち、物語・説話・能と歌舞伎・近代の章を立て、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。