腹帯淵の主に取られた三番目の娘
どんな伝承か
腹帯の淵の付近に農家が二軒あるが、ある時この家の家族が同時に三人まで急病にかかり、なかなか治らなかった。ある日どこからともなく一人の老婆が来て、この家に病人があるのは二、三日前に庭前で赤い小蛇を殺したからだと言った。家人が思い当たって訊くと、その小蛇は淵の主の使者で、この家の三番目の娘を嫁に欲しくて遣わされたのだという。それを聞いた当の娘は驚愕と恐怖のあまり病みつき、医薬も禁厭も効なく四、五日で死んだ。娘が病床に就くと同時に他の三人の病は治った。家人は死体を夜半ひそかに淵の傍らに埋め、偽の棺で葬礼を済ませたが、翌日には屍は無かった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。