識神を使った安倍晴明の奇術
どんな伝承か
奈良から平安朝に至る陰陽師の中で、達人として史上に名を残す数名のうち最も世俗に知られているのが安倍晴明である。十一世紀初頭、藤原道長の世に晴明が天文博士として従四位下に叙されたのは異常の出世だった。陰陽の正系である師の賀茂保憲が晴明の人柄を見込み、暦道を我が子に、天文道の一切を晴明に分けて伝えたからである。晴明が道長の邸で瓜の中の毒を察した逸話や、道長を呪う道満を紙の鷺を飛ばして捕えた話が中世の説話集に伝わる。とりわけ識神という目に見えぬ部下を使いこなして人を驚かした所行が注目された。晴明の母が和泉国信田の森の狐だという俗説もあると述べる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。