七五岳の大木に揃えられた女児の下駄
どんな伝承か
屋久島の中間の集落で、昭和二十八年の新盆に墓参り中の母のそばから七歳の笹上佳子が消えて一か月ほどたったころ、狩人が十キロも離れた寂しい七五岳の中腹で、大木の根元に女の子の下駄がきちんとそろえて置かれているのを見つけた。もしやと持ち帰って母親に見せると、まさしく佳子のものだった。あの子は生きていると村じゅうが色めき立ち、再び捜索隊が七五岳へ向かったが、姿はなく、ほかの手がかりも得られなかった。原生林の続く奥深い山に七歳の子が分け入るとは、とても考えられないことだったという。
原典より
それから一カ月ばかり経過して、狩人がそこから十キロも離れたさびしい七五岳の中腹で、大木の根元に女の子のゲタをちゃんとそろえてあるのを発見した。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。