通夜の遺体が見せた笑い顔
どんな伝承か
親友の山川が会社で脳溢血に倒れ、その夜のうちに下落合の自宅へ運ばれて通夜が営まれた。著者は妻の許しを得て遺体のそばに一晩つき、逐一観察した。死後十二時間、腕には硬直が兆していたが、午前二時頃、不意に喉仏がびくりと動き、痙攣とともに口もとが笑ったような形になった。調べると総入歯の上顎が抜け落ちて唇が開いたのだった。かわいがられていた女秘書は、手が動いた、体温が通っていると言って泣き崩れた。著者はこれを中有の証と考え、すぐ焼いてしまうのはよくないと説いたが、遺体は四日目に火葬された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。