八九里先で見た亡母の立ち姿
どんな伝承か
内郷村に住む今田元は、昨年まで県の農業技師を務め、今は自宅で蚕種の製造に従事している真面目な人物である。先年、最上郡新庄町に住んでいたときのこと。役所の都合で遅く退出し、食事を済ませてから何心なく机に向かって書見をしていると、座敷の隅の小箪笥のところに、茶の立縞の着物を着た母の姿がはっきりと立っているのが見えた。驚いて二、三度声をかけると、しばらくして消えてしまった。内郷村から新庄までは八、九里離れている。ちょうどその時、母の死亡を知らせる電報が届いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
靈魂に就いての奇話(本誌記者編・趣味の科學)
『靈魂に就いての奇話』は、本誌記者が編んで雑誌の連載欄「趣味の科學」に載せた心霊研究の読み物である。欧米の心霊研究が説く霊魂と死後の生活、エジソンの霊界通信機の構想、ノバスコシアの騒霊事件、亡き人が夢や姿で知らせた話などを、学者の説や新聞雑誌の記事から集めて紹介する。「死後の生活」「不思議の現象と心理研究」「千里眼念寫の奇現象」と題を替えて回を重ね、終回では長尾郁子の透視や渡邊偉哉の念写の実験記録を取り上げる。