本郷へ帰してと訴える玉菊の人形
どんな伝承か
西澤笛畝が語った話。享保十三年三月二十九日、吉原仲ノ町の名妓玉菊が若くして亡くなった。彼女が死の間際まで愛蔵していた人形は中萬字屋に代々伝えられ、明治になって稲弁楼の主人小林辨吉の手に入り、同じ吉原の年増芸者松吉に譲られた。明治三十三年七月、松吉が寝ていると枕元でその人形が「姉さん、私を本郷に帰してください」と訴え、同じ夢が三晩続いた。折しも本郷春木座の盆興行の番付が配られ、二番目に玉菊を劇化した「星舎露玉菊」があり、中村歌右衛門が玉菊に扮するという。松吉は人形を抱いて楽屋を訪ね、歌右衛門に贈った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
靈魂に就いての奇話(本誌記者編・趣味の科學)
『靈魂に就いての奇話』は、本誌記者が編んで雑誌の連載欄「趣味の科學」に載せた心霊研究の読み物である。欧米の心霊研究が説く霊魂と死後の生活、エジソンの霊界通信機の構想、ノバスコシアの騒霊事件、亡き人が夢や姿で知らせた話などを、学者の説や新聞雑誌の記事から集めて紹介する。「死後の生活」「不思議の現象と心理研究」「千里眼念寫の奇現象」と題を替えて回を重ね、終回では長尾郁子の透視や渡邊偉哉の念写の実験記録を取り上げる。