二霊媒同時入神実験
どんな伝承か
その翌晩はキャビネットを二つ吊って、益田霊媒と寺倉霊媒に同時に入神してもらう実験が行われた。日本でも初めての試みとあって、心霊学者たちが三十人近く見学に集まった。実験の状況は素晴らしく、メガホンは約二十七尺から三十尺も飛び、硝子箱に入った道成寺の人形が中空へ飛揚してそのまま二階の床の間へ引き寄せられ、図書室にあったトルストイ全集が実験室の卓上へ引き寄せられるなど、名状しがたい物品の乱舞がはじまった。しまいには人形が身振りでレコードをかけろと注文し、亡き花柳寿美が出てきて『松のみどり』を踊り、大小の人形が絡みあって『重の井』の子別れを演じ、広げてあった半切の紙にはふいに大きな『神』の文字が黒々と書き残された。あらゆる物理学の理論を無視するような途方もない現象に、列席者は目をまわしてしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界(長田幹彦・1953年(昭和28年))
『霊界』は、長田幹彦が昭和二十八年に著した心霊の講話集である。著者の超心理現象研究会で行った交霊会の実験、物品の引き寄せや乾板への感光、エクトプラズムやライン博士の念力説、霊との対話から考えた死後の世界を、語りかける口調で説く。霊の実験・肉体のない人間・美しい死後の世界・霊媒の生態の四講からなり、最後の講は交霊会の夜の霊媒たちの姿を物語ふうに描く。