八九里先で見た亡母の立ち姿
どんな伝承か
内郷村に住む今田元は、昨年まで県の農業技師を務め、今は自宅で蚕種の製造に従事している真面目な人物である。先年、最上郡新庄町に住んでいたときのこと。役所の都合で遅く退出し、食事を済ませてから何心なく机に向かって書見をしていると、座敷の隅の小箪笥のところに、茶の立縞の着物を着た母の姿がはっきりと立っているのが見えた。驚いて二、三度声をかけると、しばらくして消えてしまった。内郷村から新庄までは八、九里離れている。ちょうどその時、母の死亡を知らせる電報が届いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
靈魂に就いての奇話(本誌記者編(雑誌Gloria編集部・記者)・昭和25年(1950年)前後/雑誌「Gloria」連載。戦前の心霊研究記事・諸氏所説を再編集したもの)
雑誌「Gloria」昭和25年前後に連載された「靈魂に就いての奇話」を本誌記者が編集した心霊研究アンソロジー。第一篇「心霊論者の主張/死後の生活」、第二篇「不思議の現象と心理研究」、第三篇「交霊の現象」、第四篇「千里眼念寫の奇現象」から成り、戦前の諸氏所説(福來友吉・小熊虎之助・森田正馬・谷本富・松村介石・大戸徹誠・井上圓了ら)と新聞雑誌記事を再録する。