老猿を助けた老婆と猿湯の由来
どんな伝承か
いまは湯野上温泉郷と謳われるが、その昔は湯ノ原村といった。村には三つの湯が湧き、その一つは村の北二町余り、大川の西岸にあって猿湯と呼ばれた。昔、闘争に敗れて満身創だらけになった老いたボス猿がこの湯に逃げ込み、つかりながら重傷を癒していた。だが誰も餌を運ばず、飢え死にするほかないと嘆いていたところ、枯薪を拾いに来た老婆が握り飯を与えた。猿は人が神仏を拝むのと同じ仕草で何度も手を合わせたという。老婆は毎日食べ物を運び、やがて傷の癒えた猿は山へ帰った。半年もたたぬうち、猿は一族五十匹余りを引き連れて老婆の家を探し当て、礼に宝石を並べて拝んだと伝える。
原典より
今は湯野上温泉郷と謳われているが、その昔は湯ノ原村と言った。—— 下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史)
『下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説』は、会津の下郷町の町史民俗編のうち、町内の伝説を集めた第二節である。鏡沼の大蛇や二岐山のダイタンボウ、狼に食われた祖母、湯野上温泉猿湯の由来、高倉宮以仁王と桜木姫・紅梅御前の落人伝説、伊達政宗の戦の悲話、小野の長者と小野観音の金の鰐口などを収める。伝説を自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分け、各話に地名や供養塔・墓・文化財の現状を書き添えている。