毎夜十一時過ぎの山口の一つ火
どんな伝承か
信州の上田町に、山口の一つ火と称するものがある。毎夜十一時すぎになると、山口村の方角に当たって一つの火の玉が現れるという。土地の人はこれを狐狸か天狗の所為のように思っているが、格別に恐怖心を起こすでもない。各地にある狐火なども、毎年季節を定めて現れる所では、これを見ても人々は平気であるという。害もなく利もない迷信の一例として、龍灯や肥後の不知火、越中の蜃気楼などと並べて挙げられている。
原典より
毎夜十一時すぎに山口村の方角に当たって一つの火の玉が現われる。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。